メメント森の熊

新卒で県庁に入り、2年半公務員として働いた後、スタートアップ企業に転職してフルリモート勤務をしています。アクセサリーを作って販売もしています。ここは私のスケッチブック。

【1920年代~2020年】日本におけるビーズの歴史をまとめてみました

はじめに

フィーです。子どものころからビーズでアクセサリーを作るのがすきでした。日本のビーズにまつわる事々は、女性の趣味のちいさな世界と捉えられていて、まとまった資料、客観的な資料が存在しません。しかし、小さくても確かに存在する流れです。一度書き留めておけば誰かが内容を増強してくれたり、間違いを教えてくれたりするでしょう。ということで、私が作ってみました。

1926年 日本初のビーズ手芸本が発行

日本で本格的にビーズ製造が始まったのは、これからご紹介していくように戦後です。しかしそれ以前、大正時代にも、局所的な流行?があったようなので紹介しておきます。なお当時、ビーズは輸入のものを使っていたと想像されます。
1926年(大正15年)に、日本初のビーズ手芸本が発行されています。『ビーズ手芸全書』(安藤復藏)という本です。今から100年ほど前に、すでに日本でビーズ手芸の本が出版されているとは正直驚きです。この本、古本サイトで33,000円の値段が付いていました。しかも売り切れてます。一体何が書いてあるのか、気になると思っていたら、なんと国会図書館で読んでこられた方(マニアだ…)を発見したので、引用させていただきます。

ともかく、1920年代中頃の大正末から昭和初期の日本の手芸の本でアメリカインディアンに触れているのはちょっと面白いと思います。その頃は日本でも束・ハンクチェコシードビーズを使っていたようで、糸は木綿のカタン糸の手動の蝋引き、手法はバックステッチとコーチング的なものなど、他にも編んだり織ったりいろいろな技法が紹介されたようです。ですがこのかなりセレブな層を中心にしたらしい?日本最初のビーズブーム?は、1920年代のビーズとスパンコールの流行の終了とか、不況とか、戦争とか…であっという間に途絶えてしまいます。ガラスは統制されましたし、贅沢な趣味品の輸入なんてありえない時代でしたから。ビーズやアクササリーが復活するのは、ようやく敗戦後の復興を遂げた1950年代以降、昭和30年代あたりからだと思っています。そして、同じ頃日本でもようやく欧米並みの品質のビーズの生産が始まった、と、いう感じかも、と思っています。

引用元:Old Times -チェコシードビーズと刺繍と古い時代- 大正期のビーズ手芸とインディアンビーズワーク oldtimes9様

1930年代~1950年代 昭和のビーズバッグ製造ブーム

30年代から50年代にかけて、特に戦後は、好景気にのってビーズバッグがたくさん製造されました。ネックレスやブレスレットは着物に合わないが、バッグなら合う、という理由で、日本ではバッグから流行したようです。いわゆる「おばあちゃんの代から引き継いでいるビーズバッグ」はこの時期に製造されたものがメインですね。呉服屋とビーズバッグ業界の連携もあり、着物にビーズバッグというスタイルは当時大流行したようです。しかし、洋装がメインになるにつれ、ブームは終わり、職人の数も減っていきました。
とても参考になる記事↓

日本のビーズバッグの特徴 | 〜京都のオーダーメイドアクセサリー 〜La Venereアトリエ日記

なお、現在でもビーズバッグを作り続けている会社に、有限会社の柏ビーズがあります。同社は1936年(昭和11年)に浅草橋で創業しました。現在の本社は千葉の柏市です。同社HPやinstagramでは、ため息が出るほど美しい昔ながらのビーズバッグや、現代っぽいトートバッグ、お財布、ポーチ等いろいろな商品を見ることができます。

 
 
 
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MIYUKI、TOHO、松野グラスビーズ

広島県にて、現在も国内ビーズメーカーのメインプレーヤーである2つの会社が創業します。株式会社MIYUKIが1949年3月 (昭和24年)創業、トーホー株式会社が1957年(昭和32年)創業です。広島県はビーズの産地なんですね。広島県は私の大好きなPerfume、牡蠣、お好み焼き、そして高品質なビーズを生み出しているので、全く関係ないのにものすごい愛着を感じます。
また、1988年(昭和63年)には、松野工業株式会社が宮崎門川工場グラスビーズ製造ラインを完成させています。最近ブランド化にも力を入れている松野グラスビーズですね。国内の3大ビーズメーカーです(というかこの3社以外にあるのだろうか?)。

1970年代 最初のビーズ手芸ブーム到来。担い手は「少女」

さて、国内ビーズの生産が充実し、最初のビーズ手芸ブームがやってきます。70年代にはMIYUKI社が販売した、デリカビーズのような小さいビーズで、ドット絵のような感じで動物をつくるキットが大流行したそうです。このブームの担い手は、当時の小中学生、いわゆる「少女」世代の方たちでした。

2000年代初期に出されたさめじまたかこさん(1970年生まれ)の著書の後書きにも、「ビーズは子どもの頃流行っていた」という記述がありました。1970年代のビーズブームは一定程度大きかったと伺えます。ここで子ども時代にビーズにハマった世代が、2000年のビーズブーム再来の土壌を作ったと言えましょう。
なお、1975年には貴和製作所が創業しています。当初はオリジナルチェーンメーカーとして始まったようです。

2000年代 ビーズ手芸ブーム再来、スワロフスキーの大流行

2000年代には、ビーズ作家と呼ばれる方たちが興隆してきます。さめじまたかこさんや、日柳佐貴子さん(日柳さんは現在もビーズ作家として活動されています)、他にもたくさん。さめじまたかこさんはもともと美容師で、趣味のアクセサリー作りが評判になり、最終的には本の出版や、ビーズキットの通信販売といったビジネスになっていったようです(さめじまさんのファンなので記述が偏ります…すみません)。

この時期のビーズブームが70年代のそれと違うところは、「デザインが洗練され大人っぽくなったこと」に尽きると思います。担い手は20代~30代の若い女性。ビーズで作られていても、ジュエリーのようなデザイン性があり、とはいえジュエリーよりも気軽に使えて嫌味が無い、という絶妙なところを突いています。私がは今でも2000年代のムック本に載っている作品のデザインを参考にして作ったりします。
また、2000年代にはソロバン型スワロフスキーの流行があったようです。
このスワロフスキーブームを受けて、2001年に蕭易風(しょうえきふう)氏が、もともと取り組んでいたアクセサリーの事業を基盤に株式会社エンドレスを設立、浅草橋に「PARTS CLUB」1号店を立ち上げます。パーツクラブができたのが市中のブームがきっかけだったなんて、胸熱…!

news.nicovideo.jp

この時代は、インターネットもまだギリギリ今のような修羅の国ではなく、完全に個人が趣味で作品をアップしているだけの楽しいHTMLサイトがあり、フィー少女は毎日、好きなビーズ職人さんのサイトを眺めていたものです。最近そのサイト、とうとう消えましたけどね…。

yamaffy.hatenablog.com

 2010年代 オンラインプラットフォームの台頭

2000年代には、インターネットでモノを売り買いする、ということが徐々に浸透していきます。アメリカでは2005年、ハンドメイドやアンティーク、クラフト資材に特化したプラットフォームのEtsyが設立。ユーザー同士が繋がるコミュニティを特長とし、2020年現在もコロナ禍でさらに存在感を増しています。日本でも、2009年にCreema設立、2013年 メルカリ創業、2014年にInstagramの日本語版が開始、GMOペボパがminneのサービスを開始。個人が自分の作ったものを発表したり売ったりするのがものすごく簡単になり、ハンドメイドが一過性のブームというよりはひとつの大きなジャンルに成長しました。

2020年 韓国のビーズブームが日本にも到来

最近、またビーズブームが来ているようで喜ばしいなぁ…と思っていたら、韓国のビーズブームが日本に波及してきたもののようです。韓国の女優さんやアイドルが身に着けていてブームになったらしいです。コロナ禍でおうち時間が増えたこともブームを後押ししているのでしょう。youtubeでは韓国人の女の子が、ビーズの卸売りのような場所で買い物をしている様子を撮ったvlogを観ることができ、韓国への行ってみたさが増すばかりです。


ENG)비즈반지 정복하고 비즈키링 뿌시러 동대문 또 왔어요🍒(재료 가격/ 만드는 법 까지!)Beads tutorial

韓国発で流行っているビーズアクセサリーの特徴は、デザインや作り方が、とてもシンプルで子どもっぽく、むしろそれを可愛いとしている、ということです。ほどんどビーズをテグスに通すだけ、使うテクニックは花編みくらいです。キッチュさ、愛らしさを押し出したデザインといえばいいのでしょうか。たしかに可愛いのですが、さんざん高められたクオリティーのハンドメイド作品が、異常な安値で売られているのを日々見ている身としては、「これが500円で売れてしまって良いの…?!30秒で2円で作れるのに…?!」と、思ってしまいます。
(disっている気はないのですが、気を悪くされるといけないので、instagramから画像を引っ張ってくるのはやめます。笑)

正直、適正価格なのかどうかは疑問ですが、デザインはかわいいし、今の時代の気分にも合っていると感じます。なにより、より多くの人がビーズに興味を持ってくれるきっかけになっていることはとても嬉しいです。

おわりに

ひとまず知っていること、調べたことをまとめてみましたが、日本ビーズ史の豊かな世界を書き表すのには全然足りていないと思います。それに、私は生まれる前(1995年より前)のことは体験してないのでよく分かりません。客観的なまとまった資料が存在しない以上、大切なのは体験談を集めることです。様々な世代のビーズ好きの皆様が、あのとき流行っていたもの、なつかしの商品等、自分の体験を共有していくことが、ビーズ史編纂には重要だと考えます。引き続きご協力よろしくお願いいたします。なにか参考になることが1つでもあれば嬉しいです。ビーズ好きの一人として。ぺこり