高校の時にものすごく仲の良かった友達(もちろん今でも仲いいけど)の家の、屋根裏部屋で読んだ。その時間自体が夢っぽかった。
これを読んだ時は高野文子という作家(漫画家?)自体知らなくて、「こういうのも漫画のジャンルに含まれるのかぁ」というのが正直な感想。絵がとても洗練されていて可愛くて、とくに線が柔らかいのが好き。括りとしては漫画…で良いんだろうけど、イラスト本として飾っておきたい感じがある。
中身は、短い作品が17編入っている。私がいちばんグッと来たのは「田辺のつる」。ぼけた82歳のおばあさんが、ちいさな少女の姿で描かれていて、話を通してすごみがある。あとは、女であることへの違和感、嫌悪感について描いてあるものが数編あったり、友達への複雑な感情とか、まあ、よくあるといえばよくあるテーマのものもある。でもいちいち、夏の昼下がりの透き通った感じとか、銭湯で湯気がもあもあして人の輪郭があいまいになっていく感じ、17歳のときくらいのぽっかりした気持ち、ソーダ水の懐かしさとか、細かいところがすごく良いので何回も見返したくなる。表題作の「絶対安全剃刀」については、特に好きではなかった。うーん。これは電子書籍になっていないし、どちらかというと本として持っておきたいので、買おうか迷っている。