メメント森の熊

新卒で県庁に入り、2年半公務員として働いた後、スタートアップ企業に転職してフルリモート勤務をしています。アクセサリーを作って販売もしています。ここは私のスケッチブック。

『サラリーマンはなぜサーフボードを抱えるのか? / Why is the salaryman carrying a surfboard?』読んだ

久しぶりに、読めてよかったなという本があったのでレビューします!
日系アメリカ人デザイナーRay Masakiさんの『サラリーマンはなぜサーフボードを抱えるのか? / Why is the salaryman carrying a surfboard?』です。

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会社のslackにこの本の情報が文脈不明で流れてきたのですが、表紙をひと目見て、この本は絶対に面白い!と確信(自分のジャケ買いは結構あたる)。

たくさん出版していない本で、そのタイミングでは売り切れていたのですが、3月の増刷でゲットできました。

以前から持っていた違和感

私は以前から、トレーナーやTシャツに描かれた謎の意味不明な英語や「美白」を重んじすぎる美容業界、日本人向けブランドのアパレルなのにモデルが欧米系の外国人であること、美容院のカタログに載っている「外国人風ヘア」の存在、職場の先輩が私の友人の写真を見て言った「まあ欧米人にブサイクとか存在しないもんね」という言葉、などなどの、日本における欧米的な要素の礼賛、および氾濫に違和感を持っていました。今回サラリーマン本を読んで、違和感が言語化され、言葉を得た気がしました。

ちなみに、紙面を横に2分割して、左には英語、右には日本語という特徴的なスタイルで書かれています。

日本クリエイティブ業界の文化盗用/その歴史的経緯

真崎さんは、日系アメリカ人という立場から、日本のクリエイティブ業界において文化盗用が常態化していることを批判します。

ぼくの考えは、日本のクリエイティブ業界は、他国の文化を、それをかたちづくる文脈を深く理解することなく使うことで恩恵を受けてきたというものだ。そしてこれは、西洋文化を美化して使うことによって、またマイノリティの文化をステレオタイプし、軽視することによって、ある部分においてはグローバルな白人至上主義と共犯関係にある。このエッセイのゴールは、この現象の歴史的な背景を調べることである。

上記は冒頭で出てくる文章で、本書を大体まとめてくれています。
また、その原因を、敗戦後に欧米文化を優れた憧れの存在と捉えさせられ、その後の経済成長による再鎖国で、欧米文化の更なる幻想化が進んだことによると述べています。

さまざまな具体例:これも文化盗用だったのか

とにかく具体例が面白いです。戦後、国際社会から高く評価された、東京オリンピックのポスターを作ったデザイナーは、実は戦時中はプロパガンダの仕事をしていたことから始まり、日本のデザイン業界が生み出したクリエイティブへの批判が続きます。その中には自分も同じように違和感を持っていたもの(テレビで芸能人がするブラックフェイス)や、変だなと思ってはいたが、この本を読むまでは文化盗用だとは感じていなかったもの(どこにでも蔓延する「飾り英語」)、文化盗用であることを全く知らなかったもの(日本の下着ブランドNagiのビジュアルがアメリカのThinxのパクリであったこと)がありました。このほかにも興味深い事例がたくさん並んでいます。

ハンドメイドアクセサリーで考えてみる

私もハンドメイドアクセサリーを作る身として、自分が素敵だなと思ったデザインは、日本のものであれ外国のものであれ、すぐ真似して作ってみたくなります。そもそも、ハンドメイドアクセサリーを作っている理由が、「高いお金を出さなくても自分の欲しいデザインのアクセサリーが欲しい」なので、自分の考えはもともと文化盗用と親和性が高いと感じます。

元々素敵だと思ったデザインに近づけられると嬉しいです。でも、その方法と程度によっては、文化盗用になる可能性がありますね。その線引きは難しいし、自分ではパクリじゃないと思っていても、周りに指摘されることもあります。ですが少なくとも「元々のデザインへのリスペクトがあるかどうか」「ちゃんと事前に考えた上での判断か」というのは自分の中での最低ラインとして持っておきたいなと思いました。

最後の部分を引用して終わりたいと思います。

We are at the significant time in history where the world is becoming more globalized and will continue to rapidly become more interconnected. With that comes the responsibility to emphasize with and try to understand other cultures and societies, or we continue to risk indirectly aiding in the opression of marginalized groups. We are at a time when we must think of one another.
We can take actions that further divide us, or we can take actions that unite us.

What will you decide?

分量も内容も良く、とてもいい読書でした。ありがとうございました!