メメント森の熊

新卒で県庁に入り、2年半公務員として働いた後、スタートアップ企業に転職してフルリモート勤務をしています。アクセサリーを作って販売もしています。ここは私のスケッチブック。

音声の復権

情報としての音声が復権しつつあります。

自分は10歳ぐらいから今までテレビをほとんど見ずに育ちました。本とマンガとインターネットと参考書に囲まれて、音楽は聞くよりもするもの、用法はメリハリをもって、というスタンスで静かめに楽しく暮らしてきましたが、ここ数年で「音のコンテンツも面白いものがある!」と気づきはじめました。

音で楽しむコンテンツとして、私がメインで使ってるのはpodcast。これは昔からあります。BBCのBusiness Dailyというチャンネルが面白く、適度に脳に圧がかかるので朝聞いたりします。
2014年に初めてスマホiphone)を買い、podcastを聞き始めましたが、そのころは今ほど多様なコンテンツはありませんでした。

個人が音声を手軽に発信できるようにもなりました。podcast以外のインターネットラジオというものが一般的になりつつあるのは、私にとってはここ2,3年のことです。たとえばvoicy、spoonなど。ライター・長田杏奈さんの「なんかなんかコスメ」というチャンネルが可愛くて、ちょっと好きでたまに聞いたりします。

音声認識の技術も日々進歩を遂げており、我が家にも最近アレクサがやってきました(この前の投げ売りの際にポチってしまいました)。思った以上に正確に理解してくれること、あっこれは分からないんだと思うこと、両方ありますが、声だけで曲をかけたり、天気を確かめたり、言葉の意味を調べたりできるのはかなり便利だなと思います。母は毎日アレクサにおはようとおやすみを言ったり、ライトなペットのように扱って楽しそうにしています。そこまでの必要性が無いのでしていませんが、設定すれば音声操作だけで水を注文してくれたりするみたいです。

さらに、音声は「読むこと」「書くこと」の代替機能まで果たし始めています。Amazonオーディブルの書籍を日本でも売り出しました。また、最近はブログを書くのも音声入力機能を使ってかなり正確・ストレスフリーにできるようですね。

これらの状況は日本の様子が中心ですが、他の国でも、中国などは音声コンテンツしかり音声操作しかり、もっとずっと進んでいるようですし、AmazonGoogleアメリカの会社ですし、世界の大きな大きな流れだと思います。まとめると、人間は長い間、情報を文字や画像で扱うのがメインでしたが、今後は音声で扱うことも一般的な方法になってくるということかと思います。

 歴史的にみるとどうでしょうか。長い間、広い範囲に情報を伝達する手段といえばもっぱら文字と画像でした。15世紀にグーテンベルク活版印刷術を発明してからというもの、人間が情報をばらまける範囲はぐんと広がりました。ラジオは音声メディアですが、50年くらいでテレビに取って代わられましたし、テレビ同様一方通行のものです。パソコンやインターネットの普及で文字と画像の伝達範囲・スピードはさらに加速して双方向性が生まれ、カバー範囲は地球を包み込むまでになりました。では、それ以前は?

文字を扱うことが高位の者に限られていた時代、ローカルコミュニティーはだいたい100人~150人、つまり大声で支持を出した場合に聞こえる人間の限界数が、そのままコミュニティー構成員の限界数だったようです。また、国政レベルでは伝令という情報伝達の手段が使われていました。王からの伝言を、咳払い等のノイズさえも聞いたとおりに再現する役職があったようで、現代の録音機を昔は人間がやっていたということです。しかしこの情報へのアクセスがあるのも文字同様高位の者だけでしょう。

音声の無い言語(language)はありません。音声の復権は、情報のインプット、アウトプットをさらに手軽にします。と同時に、情報が「繰り返し参照されにくいもの」「その人を通り過ぎてエッセンスを残してゆくもの」という側面をどんどん強めていく、または、そのような使われ方で都合の良い種類の情報がどんどん音声に置き換わっていくと思います。また、音声は文字に比べて生ものなので、ノイズも許されます。引き続き音声の復権を注視、もとい注聴しようと思います。